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「日本の患者さんに、より良い治療と回復法を!諦めなければ、絶対回復できる」摂食障害ホープジャパン 安田真佐枝さん

Updated: May 15



摂食障害の回復に携わる支援者の活動や「思い」に迫るインタビューシリーズ「回復の扉を、ひらく」第五弾!今回は、日米両国で看護師として摂食障害の治療に携わる他、翻訳活動や医療関係者にむけた啓発活動、そして当事者向けの支援事業を展開しておられる摂食障害ホープジャパンの安田真佐枝さんにお話を聞きました。



安田さんは「摂食障害から回復するための8つの秘訣(以下、『8つの秘訣』)」を含む、多くの摂食障害に関する本を翻訳されていますが、特にこの『8つの秘訣』の本を翻訳された経緯やこの本の魅力についてお聞かせください。


当時、私はUCLAの摂食障害専門プログラムで看護師として勤務しながら、日本の精神科でも勤務経験がありました。米国では摂食障害の治療体制が整っている一方、日本では外来治療が主流、入院は低体重の方のみ、そしてその内容は行動制限療法が中心で、患者が十分な治療や看護を受けられない現状に心を痛めていました

 

子供が成長し、少し余裕ができた頃、私は米国の摂食障害領域で評価されている書籍を翻訳することで、日本の摂食障害治療に貢献できるのではないかと考えました。複数の出版社に問い合わせた結果、ひとつの出版会社(星和書店)が興味を示して下さり、翻訳出版の道が開かれました。最初に手掛けたのは、回復者が執筆した『私はこうして摂食障害から回復した』。続いて、『食べても食べても食べたくて』の翻訳にも取り組みました。

 

その後、UCLA近郊の治療施設「monte nido (モンテニード)」の創設者であるCarolyn Costin氏の勉強会に参加し、彼女が紹介する回復の術や人柄に深く共感しました。彼女自身が回復者であり、患者との関係を大切にする姿勢に感銘を受け、この知識を日本の支援者や患者に届けたいと強く思いました。この出会いをきっかけに、『8つの秘訣』の翻訳出版が実現。その後、実践的なワークブックも刊行し、より多くの人が回復のプロセスを具体的に進められるようになりました


私は個人的に、この8つの秘訣をすべて網羅して、実際にそれを行動に移して、実践すれば、必ずみなさん、回復できると信じています。そしてこの本が、摂食障害を抱える人々や支援者にとって、有益な一助となることを願っています。

 

安田さんは、そのCarolyn Costinさんが立ち上げた摂食障害のためのコーチングプログラムも修了されています。この摂食障害コーチ養成プログラムの内容や、米国における摂食障害コーチの役割や立場について教えてください。


米国における摂食障害の治療は「チーム医療」が基本で、精神科医やセラピスト、内科医や栄養士がチームとして患者を支える体制が整っています。しかし、日常生活の食事や買い物など、日々の葛藤に対しては十分なサポートが難しく、そこを補うために「摂食障害コーチ(Eating Disorder Coach)」という新たな役割が生まれました。摂食障害という病気は、1日に3度の食事、そして、2−3回の間食に、毎日、取り組む必要があるのですが、それが、患者さんにとっては、とてもとてもむずかしいことだからです。


このコーチ養成プログラムを立ち上げたのは、前出の摂食障害治療施設「モンテニード」の創設者Carolyn Costinです。彼女のプログラム(Carolyn Costin Institute)では、約1年間のオンライン学習、課題やテスト、さらにクライアントとの実践セッションを通じたインターンシップが組み込まれています。


コーチは食事や買い物、外食など、患者が日々直面する課題に伴走し、回復をサポートする役割を担います。適切な訓練を受けたコーチが患者さんに寄り添うことで、回復の可能性を広げる取り組みが米国では進んでいます。日本でも、まずはチーム医療の体制や、医療側の専門性が向上した暁には、こうした役割の重要性が認識される日が来るかもしれません。

 




米国では回復者がコーチやピアサポーターとして活躍されていると聞いています。回復後に「支援者」として活動する上での、強み、また気を付けるべきことなどを教えてください


回復者がコーチとして活躍する上での強みは、やはり患者の経験を深いレベルで理解した上で、サポートできることではないかと思います。回復者がコーチとして活躍するには、回復してから2年が経過しているということが第一条件となります。


また、トレーニングを受ける中で、自分のことをどこまで話すのか・話さないのかといった境界線を学ぶことも重要です。コーチに悪気がなくても、過去の自分の経験(例:何キロまで体重が下がったとか、など)を語ることが、患者にとって悪影響になることもあります。また、回復から2年以上経過していたとしても、患者の行動や思考に刺激され、自分の摂食障害の部分がうずいて、再発する危険性もあります。そのような境界線を学ぶ上でも、やはりしっかりとしたトレーニングを受ける必要があると思っています。


現在、安田さんは、摂食障害ホープジャパンを通じて、特に当事者向けにどのような活動をされていますか?


当事者向けには、今年から耳から回復」というポッドキャストを毎日配信しています。この番組では、回復のヒントや励ましを伝え、リスナーの皆さまからの質問に答えたり、回復者や支援者の方々との対談などを紹介しています。


また、番組を通じて個別にご相談いただいた方との個別オンラインセッションや、3か月のマンツーマンでのコーチングも提供しています。3か月プログラムでは、毎週1回個別セッションを提供しつつ、食事記録に対してフィードバックを提供し、LINEでサポートしています。患者さん独自の食べ方のルールや、その方の思考パターンやその方の行動の癖を一緒に紐解いていき、3か月間一緒に回復に向けて取組むような内容となっています。


一方、やはり日本の医療機関における治療の質を向上させていく取組も重要だと考えています。そもそもの摂食障害症状や摂食障害行動などに焦点をあてた本質的な回復を支援できるよう、帰国の際には、摂食障害を扱う病院の医師、看護師さん、スタッフにお話をさせていただいたり、看護大学の学生さんや教員の方へ講演をさせていただいたりしています。また、日本の医療従事者や支援者、ご本人向けの海外治療施設視察ツアーなども企画しています。

 

安田さんが、当事者の方やご家族に接する時に大切にしていることや気を付けていること、モットーなどがあれば教えてください。


まずは、摂食障害は回復できるとお伝えしています。回復ができないのだとしたら、それは途中で諦めてしまったから。しかし、諦めないで続けていけば、絶対回復できるということはお伝えしています。あとは、「今の段階で一番この患者さんにとって必要なこと」に焦点を当て、できてないことではなくて「できている」ことに目を向けるようにしています。


私自身も回復者なので、回復がとても大変であることは重々承知しています。なので、出来ていることを大切にしながら、更に回復を進めることができるよう、一緒に考えながら、ご本人さんが希望を持ち続けられるよう伴走したいと思っています。



回復における親の役割はどのようにお考えですか?


摂食障害の回復過程において、親御さんは重要なサポーターです。しかし、時にコミュニケーションのずれから、親の意図と本人の受け取り方が食い違うことがあります。例えば、親の言動が本人にはネガティブに伝わることもあり、そのギャップを埋めるために、間に入って通訳者のように支援するケースがあります。


また、親御さんが自身の気持ちを押し殺し、患者の言いなりになることで、逆に回復の妨げになる場合もあります。しかし、本人の「気持ちを理解すること」と、「本人のいいなりになること」は全く別物です。摂食障害があるが故の言動や行動と、ご本人の気持ちや行動を見極め、摂食障害の部分については毅然とした態度をとれるよう、ご両親の病気への理解を促進しサポートしていくことはとても重要だと考えています。


回復とは、どのような状態だと思いますか?


摂食障害の渦中にあるときは、患者さんの思考や行動、生活のほぼすべてが、食べ物や体重のことで占められている状態かと思います。それが、回復していくと占めている割合が減っていき、最終的には食べ物があるべき役割に落ち着いて、体重のこともそこまで気にならなくなり、視野が広がって、自分の楽しみを味わうことができるようになっていく。体重や食べ物よりも、関心の持てるものが増えていくようなイメージでしょうか。体重が元に戻ったからと言って、回復ではない。それはあくまでスタートだと思っています。




最後に、回復のスタートラインに立った方々にメッセージをお願いします。


まずは、みなさんが摂食障害なのだと認められたこと自体が、すごいことだと思います。まずはそれをできた自分を認識し、ほめてあげてください。そこまで来られたのであれば、あとは自分で決めた決まりを逆走していく。これがとても大変でつらい過程なので、サポートしてくれる存在が大事だと思っています。諦めなければ、絶対回復できる。もっと自由になれるし、もっともっと楽になれる。病気をしたおかげで人生が充実してくるということもあると思うので、諦めずに、そして 人と比べずに自分を信じて前に進んでもらいたいなって思います。


インタビュー実施日:2025年5月4日

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Image by Jadon Johnson

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